石川県立能登高等学校

探究の窓

2026/03/24駆除するだけではない、新たな磯焼け対策の提案 ~ウニ班の探究~

能登高校の「総合的な探究の時間」では、生徒たちが自分たちで探究テーマを見つけ、情報を収集・整理しながら、課題解決に向けて仮説形成と検証を繰り返します。

今回は、そんな探究チームの中から「ウニ班」の取り組みをご紹介します。

活動のきっかけ・駆除活動の開始

近年、地球温暖化をはじめとした様々な要因で海洋環境は急速に変化しています。
その中でも特に顕著なのが海水温の上昇です。
海水温が上昇すると、これまで獲れていた魚が獲れなくなったり、赤潮が発生しやすくなったりするなど、海で起きている変化は私たちの暮らしにも少なくない影響を与えます。

こうした変化の中で、「ウニ班」の生徒たちが注目したのが、海水温上昇が引き起こす深刻な問題の一つである「磯焼け」でした。
「磯焼け」とは、ウニなどの植物食性の動物によって海藻が食べ尽くされ、広い範囲で海藻が消えてしまう現象です。
その様子は「海の砂漠化」とも呼ばれています。
海藻がなくなると、そこをすみかにしていた魚などの生き物も姿を消し、周辺の生態系が崩れてしまいます。

能登の里海は海藻が豊かで、多くの生き物が暮らしています。
しかし海水温の上昇によってウニの活動が活発になり、海藻が食べ尽くされれば、この豊かな自然が失われてしまうかもしれません。

こうした問題意識から、「ウニ班」の生徒たちは行動を起こしました。

そこでまず「ウニ班」の生徒が始めたのは、ウニの特殊採捕許可を取得し、特定のエリアで徹底的にウニを駆除することでした。そして、その結果、海藻がどの程度増えるのかを検証しようと考えたのです。
「総合的な探究の時間」だけでなく、放課後の時間も使いながら、「ウニ班」は自主的に駆除活動を続けました。

ウニの駆除をする「ウニ班」

駆除されたウニ

駆除活動では、100平方メートルほどの範囲だけでもカゴがいっぱいになるほどのウニが生息していることが分かり、生徒たちは大きな衝撃を受けました。
しかし、駆除活動を継続した結果、そのエリアでは最終的にほとんどウニが見つからない状態にまでなりました。
そして、駆除活動がひと段落し、いよいよ海藻が増えるか否かを観測しようとした頃、「ウニ班」はある問題にぶつかりました。

駆除するだけではない、新たな磯焼け対策の提案

生徒たちが気づいたのは、次の事実でした。

「海藻が増えてくるのは冬なので、実際にどのくらい海藻が増えたかは冬になるまで分からない」

ウニ班がぶつかった問題は、駆除の結果が見えるのが当分先であるというシンプルな事実でした。
駆除活動がひと段落したのは初夏の頃。
つまり、駆除活動の効果が見えるまで半年近く待たなければならなかったのです。

活動が止まってしまうかに思えたそのとき、「ウニ班」は別の発想をしました。

駆除したウニそのものを活用できないだろうか。

きっかけは、駆除したウニを入れているカゴを確認したときでした。
死んだウニの殻をよく見ると、触り心地の良い細かな突起と規則的な小さな穴が並ぶ、独特で美しい形をしていることに気づいたのです。

「これは何かに使えるかもしれない」

調べてみると、駆除されたウニは多くの場合、そのまま廃棄されるか、細かく砕かれて肥料の一部として使われることが分かりました。
しかし、それではウニ殻の独特で面白い形状は活かされません。
そこでウニ班は、メンターの先生たちと相談しながら、ウニ殻の活用方法を考え始めました。

そしてたどり着いたのが、ウニ殻の形を活かした小物づくりでした。
かわいらしい小物として活用することで、「磯焼け」の問題を伝えるきっかけにもなると考えたのです。

これは単なる工作ではありません。
ゴミとして捨てられるか砕かれるだけだったウニに、ひと手間を加えることで新しい価値を生み出す「アップサイクル」の提案でもありました。

ウニ殻を使った小物づくり

こうして「ウニ班」は、本格的にウニ殻を使った小物づくりに取り掛かりました。

ウニ殻はとても薄く、落としたり少し強く持ったりしただけでも割れてしまうほど繊細です。
そのため、ニスを塗って補強したり、色を塗って元の地味な灰白色の殻をカラフルにしたりと、さまざまな工夫を重ねました。

何時間もかけて試作品を作り続け、少しずつ作品のバリエーションも増えていきました。

ウニ班が制作した、ウニ殻の雪だるま

他にも、

  • ウニ殻を使ったクリスマスツリー

  • 壁からぶら下げるクラゲ型の小物

  • 割れたウニ殻にカラーサンドや光るビーズを入れ、レジンで固めた作品

など、多くのアイデアが「ウニ班」から生まれました。

こうした作品は外部にも発信されています。
例えば、「まちなか鳳雛塾」に松本洋平文部科学大臣が訪問した際には、会談の机にウニ殻の小物が飾られました。
また、子ども向けイベントを行う他の班と協力し、ウニ殻工作を体験しながら磯焼けを学ぶワークショップも開催しました。

「ウニ班」の活動の成果と今後の展望

そして活動を続けるうちに冬が訪れ、いよいよ駆除エリアの海藻の増え方を確認する時期になりました。

ウニを駆除しなかったエリアの海藻の様子

ウニを駆除したエリアの海藻の様子駆除の効果は一目瞭然でした。
駆除を行わなかったすぐ近くのエリアでは、大きく育ったウニがいくつも見られ、海藻はまばらにしか生えていませんでした。一方、駆除を行ったエリアではウニの姿はまったく見られず、代わりに黒っぽい海藻がびっしりと生えていました。

「ウニ班」は、当初の目的であったウニ駆除によって海藻が増えることを実際に確かめることができたのです。

しかし生徒たちは、ここで満足することはありませんでした。

駆除を継続した場合の海藻の変化を調べること。
ウニ殻の小物を道の駅などで販売し、より多くの人に磯焼け問題を知ってもらうこと。

今年の探究を通して、生徒たちの中にはさらに知りたいこと、取り組みたいことが次々と生まれてきました。
来年度の「ウニ班」の活動にも期待が高まります。